違和感

【違和感】……ちぐはぐな感じ。
(広辞苑より引用)

作:井川KP


「……『乙女座の貴女は、失敗を恐れずチャレンジが吉です』か。
 あーあ、それならもっと派手に動いときゃ良かったな」

天井を仰ぎながら、真はつぶやく。
事務所のソファに座りながら、朝方届いていた占いのメルマガを確認していたのだ。
なお、現在の時刻は日も西に傾く夕方である。

「なんでアンタは朝届いたメールを今見てるワケなのよ?」

真の視界に、端正な可愛い顔とおでこが映る。
ソファの後ろからひょいっと身を乗り出し、話しかけてきたのだ。

「今日は1日ロケと打ち合わせでケータイ見られなかったんだよ。
 というか人のケータイの中身見るなよ、伊織」
「あら、ごめんなさいね。
 でもケータイの中見せたくないなんて、男の子みたいね」
「それは男女関係ない!」
「にひひっ♪」

伊織が軽くからかってきた。
これが悪意のある声かけだったり、心ない言葉だった場合は真は容赦なく怒る。
が、伊織に関しては心の底からそんなことは思ってないことを真は知っている。
なので、少し苦笑いを伊織に返した。


「そう言えばアンタ、今日はもう仕事終わりでしょ?
 まだ上がらないの?」

ソファの後ろにいた伊織がくるっと回り込み、設置されている冷蔵庫の方へ向かう。

「もうすぐ響が仕事上がりで帰ってくるからさ。
 せっかくだから一緒に帰ろうかなーって」
「あぁ、なるほど。
 ダンスのことでもダベりながら帰るワケね」

喋りながら伊織は、冷蔵庫からオレンジジュースとミネラルウォーターを取りだし、
ミネラルウォーターの入ったペットボトルを真の方へ向かって投げる。
ぱしっ! といい音を立てて真はキャッチし、蓋を開ける。

「サンキュー」

それだけ言って、中の水を飲み始める。
伊織もオレンジジュースの缶を開け、口をつける。
その時丁度、

「戻ったぞ~」

甲高く可愛らしい声が表戸の方から聞こえた。

「いや~、今日のロケはしんどかった~……」

響がひょろぬけたような声を出しながら近づいてくるのが判った。

「あ、お帰り響」
「お帰りなさい、響」
「うん、ただいまー」

ブーーーーーーーーーーーーー!!


響を見たその瞬間、真と伊織は盛大に飲み物をふきだした。

「うわっ、汚な!! なんだよふたりして!?」

突然の出来事に、伊織は狼狽を隠せない。
真と伊織は響の『上の方』を見ながら言う。

「ななななな、なんでもない」
「そ、そうよ、別に……!」
「ふーん……まぁ良いけどなー。
 あー、ノド乾いた!」

冷蔵庫にかけより、中からジャスミンティーを取りだし、ごくごく飲み始める。

「……伊織、あれどう思う?」

真は響の『上の方』を指さす。

「……ギャグ?」

伊織も響の『上の方』を指さした。

「……触覚だよね」
「……触覚ね」

……響の頭から、2本の立派な触覚が生えていた。
太さは1センチ、長さは10センチほど。
しかも先端がゴルフボールくらいの大きさのボール状になっていた。

「なんだと思う、あれ……?」
「自分で受けると思ってやったギャグでしょう?」
「……いや、響は自分からそういうことはしないよ」
「それもそうね……」

確かに響はそういうことをする人ではない。

「……ロケで使った小道具かな」
「いや、だったらあんなものつけて帰らないでしょう」

普通、ロケで使った備品はその場で返すものだ。

「でもあれさ……どう見ても『生』だよね?」
「……カチューシャでもないし、頭に食い込んでるわよね」

一番の問題はそこで、それはとってつけたモノではなさそうなことである。
よくよく見るとその触覚はまるで、『響から生えている』ようにしか見えないのである。

「さっきから何、ぶつぶつ言ってるんだ」
「「なんでもない(わ)(よ)」」

響に突然話しかけられ、ふたりの声がはもる。
いぶかしげな表情をしながら、ふたりから視線をそらす。
困ったのは若干2名。

「……どうしよう」
「アンタが聞きなさい。今日は失敗を恐れない方がラッキーなんでしょ?」
「さっきの話を蒸し返すんじゃないよ!」
「アンタが言え!!」
「……はい」

このまま意地を張ると15分くらいムダになりそうなので、
真は渋々了承して、響に向かって言った。

「な、なあ響……」
「ん、なんだ?」

響は真に向き直る。

「……えーとさ」
「?」

 10秒の沈黙。


「……鑑、見てみ」
「?」

響は首をかしげつつ、洗面所に向かう。
そして、

「よし、逃げよう」
「こら、ずるいわ。私も行く」

響の姿が見えなくなったのを見て、もうツッコミを入れたくないと思ったふたりは
そそくさといちもくさんに、その場をあとにした。



「……これそんなに面白くなかったかな?」

鑑を見ながら響がつぶやいた。
そして『髪の毛』を全部とった。

「触覚のついたウィッグだけど……。
 ま、最初にふたりがフイタから良いか♪」


『教訓』
気になったら聞こう。


(終)

  • 最終更新:2011-12-17 01:20:37

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