春の境界

SS作者:雨宮シキ/こみゃーP
使用テーマ:【ナイフ】


◆春の境界





とあるビルの一室
私はもうずいぶんと使われてぼろぼろになったソファーに座っている
時刻は深夜少し前
ある人物に呼び出されていたがなかなか姿を現さない
……いい加減にしてほしいくらいだ






「すみません、待たせましたね」

待たせた何も1時間以上も待っているのだが

「いや、今来たところだ」
「……ふふっ」
「何がおかしい」
「いえ、あなたが平然と嘘をつくものですから、まぁあなたが待っているのをわかってて遅れてきたのですけど」

いけすかないヤツだ、ほんと見透かしようが無い

「……それで?」
「はい」
「……用事とは何だ?」
「これは驚きました、すでに知っていると思ったのですが」
「……悪いな、ここのところ表に気を取られすぎた」
「ふむ、彼女の存在が表のときの君の情報取得能力は著しく低下……これは興味深いですね」
「いいから、要件を言え」

この手のヤツはからかいはじめるとキリが無い
早めに終わらせたいところだ

「あぁ、そうでした。うむ……その件なんですけど、あなたのPさんが巻き込まれました」
「……は?」
「彼が単身で調べに行くと……あぁ、そのナイフだけは向けないでくださいね 彼は”まだ”生きてるんですから」
「死んでいたらお前も殺すところなんだが?」
「まぁ……そのあなたにはその原因を倒す……という言い方は違う気がするんですが」
「……彼が関わったのならしょうがないだろう」
「ほぅ、しょうがない、ですか」
「……場所は」
「はい、この封筒に全部入っています」
「……」
「まぁ君が負けることはないとは思いますが、まぁ―――くださいね」
「……ふん」




















ビルの屋上
目に見えたものは赤
それは闇か否か
薄暗い中で私は一人
彼女と
私と


「よぉ見つけたぜ」

あなたは光の中へ
私は動かない
まだ動かない

「お前だな、うちのPをやったのは?」

彼女の問いかけは正しい
私は答えない
まだ答えない

「……お前は話しても無駄なタイプか、まぁそのほうが手っ取り早いんだが……なっ!」

突撃してくる彼女をかわし、私はふわりと浮く
まだだ
まだ

「ちっ、案外早いんだなオマエ、やりがいがあるじゃないか」

今だ

「あなたは」
「……」
「あなたも飛びましょう?」
「……フザケロ」
「いいえ、あなたも飛びたくなる」
「……」

彼女はそのまま屋上の縁へ後ずさりしていく
あなたも飛べる
きっと飛べる

「……ふっ」

彼女はそのままビルから飛び出す
暗い闇の中を一人飛んで行く
たどり着いた先は向かいのビル
私の言葉が聞かない人なんて
あの人みたい

「……来いよ、もうオマエには飽きた」
「どうしてあなたは飛ばないの?」
「……さぁな」

向かいのビルの上
月が雲から隠れた存在を表しその姿で輝く
見上げる彼女と見下ろす私

「……ただ」
「……ただ、言えるとしたら」

彼女の手が私の喉を掴む
避けられない
逃げられない
飛べ
飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ

飛んでしまえ


「私はもう――に――飽きた」

彼女の持つナイフが私の胸に刺さる
彼女の目には私と
赤い線と
月が映っていた



















「消えちまった」

胸を一刺ししてやった
相手が生身なら血でも吹き出るとこなんだろうが
そうでない相手はやはりつまらない

「……ふっ」

電子音が鳴り響く、どうやら時間らしい

「あぁ、後は頼んだぜ、”春香”」














赤い光を持つ目はその光を失う
代わりに現れるのは普通の、どこにでもいる少女

「え、あれ? どうして私ここにいるんですか……?」

一人ビルの屋上に立つ少女
彼女の元へ

「天海……春香殿?」
「あ、あああ! 四条さん!? どうしてここに?」
「いえ……あなたのPから迎えに行くようにと申されたので……お怪我はありませんか?」
「え、うん、春香ちゃんは元気元気!」
「そう……それならよかったです、今日は私が送っていきますので帰りましょう」
「え、四条さん……ありがとうございます! それはそうとPはなんで私がここにいるって知ってたんだろう……」
「はて……何故でしょうね……?」
「ん~……わからないです……」

(中にいる春香のことを認知していないご様子、まだ言わないほうがいいのでしょう……まだ使えそうですしね)

「四条さん?」
「え、えぇ帰りましょうか」
「はいっ!」


彼女はまだ知らない

自分の中に秘められたもう一人を

その”春香”がこれから今の春香に影響を与えることを



【参考資料 空の境界(上)】

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  • 最終更新:2010-06-07 19:59:05

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