SS作者:クレリテ
題目消化:占い
◆嘘◆
……占い?やよい、そんな事出来たんだ?
765プロの事務所に入った途端、まるでご主人様の帰りを待ちわびていた飼い犬のような嬉しそうな顔でやよいが飛び掛ってきたかと思ったら思いもよらぬ言葉が飛び出した。
はいっ!昨日あずささんに”てそううらない”を教わったんです!このうらないで、いおりちゃんの色んなことがわかるんですよ!
(手相占い…ねぇ、まぁ確かにいつも運命の人がどうのこうの言ってるしそういうの好きそうだからわかるけど…やよいにちゃんと占えるのかしら?)
怪訝そうな顔で見つめるも、やよいは早く教わった占いを試したくてしょうがないといった感じで目を好奇心でキラキラさせていたので
…はいはい、どっちの手で占うの?
この目には適わない、と観念して両の手を差し出した。
するとやよいはうれしそうに私の左手に触れて
こっちでうらなうみたいです!
そう言って私の左の手のひらを、至近距離でマジマジと見つめ始めた。
やよいの息が手のひらにかかるたびにこそばゆい感覚が神経を微かに刺激した。
…んーー、いおりちゃんは性格に難がありって手相にでてますねー。
え、な、なによそれ!!この才色兼備の完璧超人な私を捕まえて性格に難ありって、おかしいわよ!?
ひぇっ!?で、でもここの線が…
そう言ってやよいが手のひらの線をか細い人差し指でスーーッと、微かに触れる程度の圧力でなぞると
ひゃうっ!!
急な刺激に思わず普段決して出さないような恥ずかしい声を上げてしまったので慌てて口を押さえた。
!! い、いおりちゃん大丈夫ですか!?
確かに、今まで他人に触らせた事は無かった分こんなに刺激に弱いなんて自分でも知らなかったけど、自分のせいで私に何かあったのかと本気で心配してる様子なので
だ、大丈夫よ、ちょっとくすぐったかっただけだから…。
そう言って安心させようとしたら、不安で曇っていたやよいの目がたちまち好奇心で煌き出した。
ふむふむ、くすぐったかったんですかー…えーいっ!
!?ちょ、ひゃ、ひゃめて、くすぐっ、ひゃはっはははははっ、ひぃっ!
ここぞとばかりのやよいの遊び心に満ち満ちた攻撃に抵抗する力も出せないほど敏感に反応して笑い転げてしまった。
…しばらくしてやよいは満足したのかなぞり続けた手が止まると、絶え間なく続いた刺激から神経が開放されて、私はぐったりと突っ伏してしまった。
その様を見て、やよいはやりすぎたかと反省した様子で側に寄って顔を覗き込み…
…いおりちゃん大丈夫?
そう言った瞬間!俊敏な動きで華麗にやよいの背後を取って両の手をガラ空きの脇腹に潜り込ませた。
え?いおりちゃん?
やーよーいー?よくもやってくれたわねー?これは正当なお返しなんだから!
そう言ってやよいの脇腹を両手で思い切りくすぐった。
あは、あははははははっ、いおりちゃんだめっ、あははは……あは、ひゃっ、はぁん、ふぅ…
(……?途中から笑い声じゃない、何やら艶っぽい声に変わったような……)
くすぐっていた手を止めて、やよいの顔を覗いてみると……妙に息が荒く、顔色も紅潮していた。
(も、もしかして…感じてる…!?)
察してから、ふと今の状況を冷静に見返してみる。
机に倒れこんで、甘く熱い吐息を漏らしながら、全身を紅潮させた無防備なやよい。
…ゴクリ…。
思わず喉を鳴らしてしまった。
やよいの、本人の意に反した誘惑に思わず悪い閃きが頭を過ぎった。
……私も占い、出来るわよ。占ってあげよっか?
息も絶え絶えなやよいの耳元でそっと囁いた。
え、ほんとれすかぁ?
まだ少し呂律の回らない口調だがやよいは興味を示した。
本当よ、そのまま後ろ向いててね…。
そう言ってやよいの背中側から近づくと、そっとやよいの決してふくよかとは言えない、だが柔らかく張りのある胸に手を添えた。
…?いおりちゃん、そこはぁ…
あら、知らないの?お、おっぱい占いってあるじゃない。形や柔らかさで占うの、すごく有名よ?
少し戸惑っているやよいの不信感を払拭するように強い口調でデタラメな説明を並べた。
…そうなんれすかぁ、ちょっと、えっちですね…。
(すこし羞恥心はあるようだけど、疑ってはいないみたいね…。)
べ、別にエッチなことなんてないわよ、少し触るから変な感じがしたら言うのよ?
そう言ってやよいの胸に添えていた手をゆっくり、優しく、赤ちゃんに触れるように細心の注意を払ってまさぐった。
あ……はぁ……ん……んん……っ
少し動かす度に、やよいの口から甘い吐息が漏れる。この子、凄く感じやすいのかしら。
自分のものとはやはり少し違う、柔らかさや温度、そして反応をじっくりと楽しんでいると…
…コンコンッ
思わず全身をビクンッと震わせてしまった。その反応がやよいにも伝わってしまったようだ。
やよいー、いおりー、居るのか?入るぞー。
そう言って部屋の中に入ってきたプロデューサーの目には、背筋を伸ばして座った私と、まだ机に突っ伏しているやよいが映った。
……ん?やよい、どうした?顔が赤いけど大丈夫か?
やよいの顔を覗きこんだ時、内心何が行われてたか感ずかれやしないか私の心臓は破裂寸前だった。
…はいぃ、らいじょうぶれすぅ。ちょっとうらないしてたんれすよぉ~。
…占い?何をどうやって占ったらそんな状態に…
ちょっとプロデューサー、次の仕事に行くから呼びに来たんでしょ!?すぐ行くから先に車回してなさいよ!ほら、さっさとしなさい!
やよいからボロが出るのを避ける為に無理やり言葉を遮って当たり散らした。
な、なんだよ…分かったよ、いつにもまして機嫌悪いな。生理にはまだ早いはずだが…。
そう行って部屋を後にしようとしたとしたプロデューサーの背中に必殺!いおりちゃんキック!をお見舞いして見事追い出す事に成功した。
そうこうしているうちにやよいも多少落ち着いたようだった。
さって一応仕事らしいし、ちゃっちゃと準備して下に降りるわよ。
そう言って身支度をしようとする私にやよいが
…なんで途中でやめちゃったんですか?
……そ、それは…アレよ!あの占いは他人に見られたらちゃんと占えなくなるから、やめざるをえなかったのよ!
本心を悟られまいと必死に嘘を塗り固めていく私の浅ましさに自己嫌悪しながらも、今の関係を壊すわけにはいかなかった。
…やよいは私の目をじっと見つめている。
(や、やっぱり無理があったかしら…終わった…?)
…そうだったんですかー!むずかしい占いなんですね!
絶望感に包まれかかった私の心に日の出を差すかのように、やよいは私の言葉をあっさり信じてくれた。
ほっと胸を撫で下ろして、急いで二人で身支度を整え、部屋を出る際に
じゃあまた今度、続きお願いしますねー!
そういってやよいは先に階段を降りて行った。
……また今度?またやるの?アレを?
ようやく落ち着きを取り戻していた私の脳内をやよいの一言があっさりローズピンク色に染め上げて行った。