『エレベーター』

SS作者:野良
使用テーマ:エレベーター



今日の仕事も一段落して、階下に降りようとエレベーターを待っていた。
32階から降りてきたエレベーターに乗ろうとしたら先客がいた。
「雪歩」「真ちゃん」



◆『エレベーター』


27階、26階。
32階は社長室のはずだけど、何かあったんだろうか。
そんなことを考えながら階数表示をを眺めていたら、珍しいことに雪歩から声をかけられた。

「真ちゃんて、今はソロ活動中なんだっけ?」
「うん、まあね…」

昨年度まで春香とやよいとトリオを組んでいたが、今年度からデュオ中心のプロデュース方針となったため、現在は春香は千早と、やよいは伊織とデュオ活動している。
ボクは息の合うパートナーが見つかるまでということで、未だにソロ活動を続けていた。
言葉を濁らせたボクに、慌てて雪歩が言葉を続ける。

「ま、真ちゃんはデュオを組むならどんな人が良いと思う?」
「うーん、そうだなあ……自分の足りないところを補ってくれるような人、かな。雪歩は?」

ぼやかして答えてしまったが、じつを言うとボクがデュオを組みたいのは雪歩なのだ。
でもボクみたいなタイプと雪歩ではあまりにギャップが大きすぎるのではないか、とプロデューサーにデュオの希望を聞かれた時も言えずにいた。
雪歩は今や人気アイドル、先週もCDシングル売り上げ100万枚を突破したばかりだ。社長室に呼ばれたのもその件でかもしれない。
そんな雪歩がデュオを組むとしたらどんな人だろう。
落ち着いた雰囲気の千早と組んでも絵になるだろうし、伊織と組んでも可愛らしいユニットになるだろう。
黙り込んでしまった雪歩の返事を想像しながら、階数表示に目を戻す。
19階、18階。こんなにエレベーターの進みを遅く感じたのは初めてだ。


さらにたっぷり10階分の沈黙の後、絞り出すように雪歩が声を出した。

「あの、あのね、私も、自分に足りないところを補ってくれる人にパートナーになってほしい」

想像と違った答えに少々驚きながらも、彼女の次の言葉に耳を傾ける。
もしも自分が彼女の希望の条件に漏れていなければ立候補してしまおうかな、等と仄かな期待を抱きつつ。
しかし、そんなボクの耳に飛び込んできた言葉は期待を一足飛びにするものだった。

「それでね、その、真ちゃんが良ければデュオを組んでほしいな、って」

7階、6階、5階。そこまで数えてボクの思考は一気に混乱状態になった。今、デュオを組んでほしいって言わなかった?雪歩が?
気持ちを落ち着けようともう一度階数表示に目をやる。
4階。3階。雪歩のほうを向く。不安と期待の入り交じった瞳と目が合った。
2階。
「ボクも、ずっと前から」
1階。
「雪歩とデュオを組みたいと思ってたんだ」

扉が開く前に、はっきりと告げた。






コメントを投稿するには画像の文字を半角数字で入力してください。


画像認証


  • 最終更新:2010-06-26 00:14:45

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード